好きこそものの上手なれ
先日の譜読みの記事の中で、譜読みが苦手だとしても大人になって好きな曲が弾けるように導きたい、と書きました。
書いていたら、ある生徒さんのことを思い出しました。
今日はその生徒さんの事を書きます。
その生徒さんとの出会いは、私が講師になりたての頃、彼が小2の時でした。
やんちゃくんで、ピアノに座りません。ピアノ室でかくれんぼです。
譜読みはおろか、練習もほとんどしてきません。
笑顔でレッスンにきて、笑顔で弾いて、笑顔で帰っていきました。
新講師の私は悩む事もありましたが、彼がピアノを弾く横顔を見ていると、なんとなく、いいなぁ、って思うのでした。
彼がピアノを弾くときはとてもいい表情で、好きな事をしているように見えたからです。
普段のレッスンには譜読みはほとんどしてこない生徒さんでしたが、年齢を重ねるうちにレッスンはしっかり集中するようになりました。
お母さんの好きなリチャードクレイダーマンの曲を何度か発表会で弾けるようにもなっていき、いつしか中学生の彼は私の背を越していきました。
そんなある時、
「先生、この曲が弾きたい!」
彼が持ってきた楽譜は、ショパンのワルツでした
テクニックもだけど、何より彼の譜読みのチカラでは、無理なのでは?と思いました。
でも彼が自分の好きな曲を弾きたい!と言ったのは初めての事。
思い切ってトライすることにしました。
そして、彼は自力で楽譜を読み始めました。
今まで私が伝えてきたことが彼の中には残っていたのか!と、驚くほど、しっかり読譜しました。
高校生になった頃には、ベートーベンのソナタやリストの愛の夢にチャレンジしていきました。
「好きこそものの上手なれ」
好きでいたからこそ、譜読みのスキルもいざというときに役立ったのだと思います。